特発性正常圧水頭症(iNPH)とは

特発性正常圧水頭症とは、最近では、ハキム病という新しい名称が提案されており、何らかの原因で、頭蓋(ずがい)内に脳脊髄液(のうせきずいえき)が溜まり、脳が圧迫され、歩行障害・認知症・尿失禁などの症状が出る病気で、「治療で改善できる認知症」としても注目されています。これらの症状が、認知症やパーキンソン病、単なる加齢によるものと間違われやすいため、適切な治療を受けずに「仕方がない」と諦めてしまう方が少なくありません。

出典:「iNPH.jp」

 

iNPHの3徴候

 

出典:「iNPH.jp」

歩行障害・認知症・尿失禁といった3つの症状が現れます。
特に歩行障害がもっとも特徴的な症状で、最初に出ることが多く、少し足を開き気味で、小刻みですり足になることが特徴的です。
しかし、原因が分からない上に、いずれの症状も加齢に伴い出現することがあるため、症状が出ても「歳のせい」と思われがちで、病気が進行するまで気づかないことが多いのも事実です。

診断と検査方法

症状の診断は、担当する専門医によって行われます。患者さんの歩く様子を注意深く観察したり、ご家族からお話を伺うなどして、iNPHの3つの徴候である「歩行障害」「認知症」「尿失禁」の症状があるか調べます。また、歩行テストを行い、歩行障害の程度を測定したり、認知症の有無や程度を調べる検査を行ったり、問診をして尿失禁の程度を確認します。問診の結果、iNPHやその他の病気の可能性を確認した後、CTやMRIといった画像診断に進みます。

問診と画像診断でiNPHが疑われる場合には、髄液排除試験(タップテスト)を実施します。タップテストとは、腰椎(腰骨)の間から過剰に溜まっている脳脊髄液を少量採取して、症状の改善度合いを観察する簡便な検査方法です。この検査前の症状の程度と比べて、検査後の症状が一時的に改善すれば、手術「髄液シャント術」が有効であることが期待できます。

手術「腰椎‐腹腔シャント術」

iNPHに対する治療は、『髄液シャント術』と呼ばれる手術を行います。
主に「脳室‐腹腔シャント」「脳室‐心房シャント」「腰椎‐腹腔シャント」の3つの方法があります。

当院では、できるだけ脳を傷つけない「腰椎‐腹腔シャント術」を優先的に採用しています。
手術時間は1時間程度です。

 

 

正常圧水頭症は、適切な診断と治療で症状の改善が期待できる病気です。これらの症状が改善し本人の自立度が高まれば、介護の負担も軽減され、患者さんだけでなくご家族の生活の質の向上につながります。

気になる症状がある方は、「年のせい」と片付ける前に、まずは一度お気軽にご相談ください

担当:脳神経外科 部長 尤 郁偉

診察ご希望の方は、脳神経の外来日にご来院ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・
佐賀県佐賀市大財町1丁目6-60
医療法人 同愛会 サンテ溝上病院
0952-24-5251
・・・・・・・・・・・・・・・・

病院広報誌「santé」のご案内

この記事は病院広報誌「santé」に掲載した記事をwebページ用に再編集して掲載しております。
病院広報誌「santé」は院内各所の本棚に設置しておりますので、ぜひお手に取ってご覧ください。